絵話塾だより

2004年に開校した絵本とイラストを学ぶ塾です。絵本ゆっくり、イラストじっくり、絵本わくわく、絵本レベルアップ、イラストレベルアップ、イヌイマサノリのドローイング、文章たっぷり の各クラスがあります。

2026年3月21日(土)文章たっぷりコース第7期・第8回目の授業内容/高科正信先生

高科先生のお住まいの近くに塩屋谷川があり、S字に曲がった川岸には低木や蔓草が茂る野鳥が来る溜まり場があるそうです。ところが最近その辺りの植物が伐採され、野鳥の姿が見えなくなっていたのですが、つい先日ウグイスの声が聞こえて、戻って来たのかと喜ぶとともに「いよいよ春かな」と嬉しくなったそうです。
実は先生の愛読書の一つに 山と渓谷社の『日本の野鳥』があり、お手持ちのどの本よりも手に取る機会が多いそうです。いつまでも身近な小さな世界に目を向けて自然を大切さを知ったり、時にはそれからアイデアを得ることもあります。

この日は、哲学的な内容の子ども向けの本を紹介してくださいました。

五味太郎の『わたしとわたし』(福音館書店  かがくのとも絵本)  は、自分の中にある矛盾を描いた作品。谷川俊太郎の『わたし』(絵 長新太/福音館書店 かがくのとも絵本)  は、他の人から見た自分というものを確認する作品でした。
「わたしは誰か?」という疑問は、ソクラテスの時代から問われ続け、答えられ続けているものですが、この2作は子どもにも分かるように描かれています。

 

続いて見ていった、神沢利子の『くまの子ウーフ』(絵 井上洋子/ポプラ社)から「ウーフはおしっこでできてるか??」では「私とは誰か?どこから来てどこに行くのか?」を、まど・みちおの詩集(理論社から「うさぎ」と「くまさん」では命の喜びを描いた作品でした。
まどさんは、『いわずにおれない(集英社文庫)』などエッセイもお薦めです)

先生はよく「大人の文学は問いを投げかけるもの、子どもの文学は問いに答えるもの」とおっしゃいますが、これらの作品にはそのどちらもが子どもにも受け入れられるようなやさしい表現で描かれています。

1924年生まれの神沢利子は若い頃に戦争を経験し、家事や育児、自らの病気で、なかなか思うように活動できず、「作品を書いている間だけ自分は自由に走り回ることができる」と、『銀のほのおの国』(絵 堀内誠一/福音館書店)のような素晴らしい作品をたくさん創作し続けました。(今年102歳)

続いては、エリック・カールの『ごちゃまぜカメレオン』(訳 やぎたよしこ/偕成社) でした。自分より秀でたものになりたいと願ったカメレオンが、次々にいろいろなものに変身していき、最後は…というお話です。
人間は願望や欲を持つものですが、望みすぎるとどうなるか?子どもに考えさせる内容です。

 

先日(3月13日)亡くなった 山中恒の『ぼくがぼくであること』(角川つばさ文庫/初版は1969年岩波少年文庫) は、高科先生が子どもの文学の作家を目指したきっかけになった作品だそうです。
普通の少年が「自分はいったい何者なんだ?」と思って行動に移すお話で、当時20歳前後の若者たちに口コミで広がったのだそうです。

レオ・レオーニの『あおくんときいろちゃん』(至光社/初版は1967年)はベトナム戦争当時アメリカの若者たちの間で人気になった絵本ですが、朝鮮戦争や日米安保条約の自動延長などで諦観し、自己否定に時代にいた当時の日本の学生たちには 、山中恒の作品が心に響いたようで、高科先生の心にも響いたようです。

休憩を挟んで後半は、テキスト辰野和雄の『文章のみがき方』(岩波新書) から

Ⅱ さあ、書こう 
 6. 異質なものを結びつける
   7. 自慢話は書かない

の箇所を見ていきました。

6. については、俵万智の作品を例に挙げ、彼女は今まで誰もしたことがなかった手法(プロポーズと缶チューハイを結びつける 等)で短歌のイメージを変えたとのこと。
これは、以前の文章クラスでテキストにしていた『書く力 私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹中政明/朝日新聞出版) では「ブリッジをかける」と説明されていた手法で、本当に伝えたいこと(A)を分かってもらうために、異質な(X)と結びつけることにより魅力的な文章にするテクニックです。

俵万智の新作エッセイ『生きる言葉』(新潮新書)  では、現代〜スマホ時代における言葉について書かれていて興味深い内容です。

7. については姫野カオルコに作品を引用していますが、エッセイ『ガラスの仮面の告白』(角川文庫) 等を読んでも、自慢話ではなくクスッと笑える失敗談やオチのある話の方が、読み手の興味を引くことがわかります。

ということで、今回の課題は「秘密」です。
「私とは誰か」という今日のテーマに則って、自分とは何者であるかという秘密の話を書いてください。
「秘密」「ひみつ」「ヒミツ」「ヒ♡ミ♡ツ」など、記述によって意味合いが違ってきますし、自分だけの秘密か・誰かと共有している秘密かによってもずいぶん違います。
例えば、家族には秘密にして友達と死体を探しに行く映画『スタンドバイミー』のような、冒険譚でもいいです。

「秘密」にまつわることなら、どんなスタイルでも、どんなボリュームでもOKです。
知恵を絞って、おもしろい作品を捻り出してくださいね!

よろしくお願いいたします。